「月刊農学部長」第6号(2018年11月)

月刊農学部長 第6号(2018年11月)

 

11月17日 キャリアデザインⅡ

創成科学研究科の博士後期課程の院生向け選択科目「キャリアデザインII」はオムニバス形式の授業で、この日が担当だった私は、「私の研究戦略論 --- 残り物には福がある ---」というタイトルで研究経歴を紹介しました。常盤キャンパスから聴講に来た2名の工学系大学院生にとっては、一貫してカイコを中心とした昆虫遺伝学およびバイオテクノロジー研究を行ってきた私の話は、全くの異分野で、おそらく二度と聞くことはないと思いますが、少なくとも、私が好きな研究を続けてきたことに対して、うらやましさを感じたようです。養蚕業の衰退により、日本の農業の中では残り物となってしまったカイコですが、私には楽しい研究人生(福)を与えてくれました。実際には研究に苦労や失敗はつきものですが、その根本に楽しさや好奇心がなければ続きません。そんな私の研究姿勢が少しは伝えられたかなと思っています。

講義を終えて帰宅後、夕食時にテレビを付けるとNHKのブラタモリで「富良野・美瑛の合言葉 残りモノには福がある」を放送中でした。単なる偶然ですが、驚きました。

 

11月14日 画期的な高校・中学校向け理科教材キット開発の記者発表

細胞に遺伝子(DNA)を導入してその働きを調べる実験は、現代生物学における基礎的研究手法であり、世界中の大学及び研究機関で日常的に行われていますが、高校あるいは中学校の教育現場で、このような実験を手軽に行うことは困難でした。農学部では、2013年から4年間、高校及び中学校の教諭を対象にしたサイエンスリーダーズキャンプ事業「ミクロな細胞からマクロな生態系に至る可視化技術と解析手法」(科学技術振興機構主催)を実施してきました(http://www.agr.yamaguchi-u.ac.jp/news/2016/08/28-1.html)が、そのフォローアップとして内海教授が開発した高校・中学校向け「昆虫細胞・遺伝子導入・遺伝子発現観察遺伝子キット」(http://www.yamaguchi-u.ac.jp/weeklynews/2018/_7481.html)が、有限会社山口ティー・エル・オーから低価格で販売されることになりました。このキットを用いた実験は、室温で培養可能な昆虫(カイコ)由来の培養細胞を使用するため、遺伝子組換え実験の規制対象外であり、高校及び中学校の理科実験室で特殊な培養装置等を用いずに実施可能です。しかも、キットに含まれるLEDランプとフィルターを使えば、細胞内に導入した遺伝子から生産されるタンパク質の緑色と赤色の蛍光を、通常の光学顕微鏡で観察できます(高価な蛍光顕微鏡不要)。また、このキットを使うことにより、青色LEDと緑色蛍光タンパク質というノーベル賞を受賞された日本人研究者の成果も体験できます。多くの高校・中学校での理科教育に利用され、将来の日本のバイオサイエンス分野を支える若者の育成に役立つことを期待して記者会見に臨みました。なお、私にとっては、これまで私の研究室で昆虫のバイオテクノロジー研究に使用してきたカイコの細胞と遺伝子発現ベクターが、内海教授によって高校・中学校向けの教材に見事に転用され、想定外の喜びとなりました。記者発表後、すぐに2件の注文があったそうです。11月28日〜30日に開催された第41回日本分子生物学会年会(パシフィコ横浜)でも、ナショナルバイオリソースのカイコの展示ブースにキットの見本を置いて宣伝させていただきました。 

 

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